「宅建は役に立たない」という話を耳にして取得を躊躇している方もいるでしょう。
宅建は不動産業界で働くうえで欠かせない資格であることから、転職に際して取得を目指している人も少なくありません。

しかし、「とっても意味がない」と言われてしまうこともあります。
結論から言えば、宅建は取得する価値がある資格であり活用次第では大きなメリットを得られます。
ただし、取得にはデメリットもあるので理解しておくことが大切です。

この記事では、宅建が不動産転職の役に立たないと言われる理由や取得のメリット・デメリットを詳しく解説します。
不動産業界への転職に興味がある人は、ぜひ参考になさってください。


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宅建が不動産転職の役に立たないといわれる理由

そもそも宅建とは、「宅地建物取引士」の略称のことをいい、不動産取引の専門家を示す国家資格です。
毎年20万人前後が受験する国家資格であり、知名度や人気の高い資格でもあります。
不動産取引での重要事項説明は宅建士のみが行える業務であり、不動産業を営むには事務所への宅建士の設置も義務付けられています。
そのため、不動産業界では欠かせない資格でもあるのです。

それなのになぜ宅建の取得は「転職の役に立たない」と言われてしまうのでしょうか?
その要因として、下記の2つが考えられます。 営業力が重視されるから 宅建士は増え続けているから  

1.営業力が重視されるから

不動産業界は、売り上げをいくら上げられるかどうかの実力主義な世界です。

特に、営業職であれば契約件数や売り上げという数字で分かりやすく比較されやすいでしょう。
給与体系で歩合制を導入している会社も多く、死角の有無よりも営業力が評価に大きく左右されるのです。
たとえば、宅建の資格を所得していても契約件数0の人より、資格なしでも売り上げトップクラスの人が会社への貢献度が高く優遇されます。

このように、不動産業界では資格よりも売り上げ重視の人選をされる傾向があるものです。
そのため、転職時も資格の有無より過去の営業成績が高い人が採用されやすく、役に立たないと言われてしまうことが考えられます。

 

2.宅建士は増え続けているから

宅建士は知名度だけでなく取得者も多い資格です。

2023年度の資格受験者は約23.4万人に上り、2022年度の約22.6万人を上回っています。
合格ラインは採点後に合格点が決まる相対評価方式であり、毎年15%前後が合格率となります。
ちなみに、2022年の合格率は17%で合格者が約3.8万人という結果です。

受験者数が毎年変動しますが、受験資格が他の国家資格に比べ緩く人気の高い資格でもあることから毎年3~4万人の宅建取得者が誕生することが予測されます。

なお、国土交通省の調査によると2021年度末時点で登録済みの宅建士の数は、112万6595人に上ります。
反対に、宅建業者の数は約12.8万業者となり2012年度の約12.2万からそれほど上昇していません。
宅建業者数に対して宅建士の数は過剰とも言える状況でしょう。

会社によっては宅建士が飽和状態でそれほど採用を優先していない可能性もあります。
また、同じように不動産業界を目指す人の多くは宅建士を取得している可能性が高くなることも予測されます。
宅建士があふれている状態ともいえるため、宅建士が採用に大きく有利になる可能性が低いのです。

 

不動産転職で宅建を取得するメリット

転職に役に立たないと言われる宅建ですが、取得が無駄というわけではありません。
むしろ、宅建を取得するメリットは大きい資格でもあります。
ここでは、宅建を取得するメリットとして、下記の3つを解説します。 面接で有利になる 年収アップにつながる可能性がある 法律系資格の登竜門と言われている  

面接で有利になる

宅建の取得は就職・転職時の面接で有利になるものです。

先述したように、宅地建物取引業は事務所の従事者5人に1人以上は宅建士を設置する義務があります。
宅建士にしかできない業務もあることから、不動産取引を行う会社にとっても必須の資格です。

業種によっては宅建が必須ということもあるでしょう。
宅建を取得していることで選択できる業種の幅が広がります。

加えて、面接時に数名の候補者で結果が拮抗していれば、最後は宅建の有無で判断される可能性もあります。

 

年収アップにつながる可能性がある

資格取得者への資格手当を支給している企業は少なくありません。
不動産会社の場合、宅建の取得で毎月2~5万円ほど給与がアップするケースが多いものです。
毎月5万円プラスされれば年収では60万円の差に変わります。

また、会社によっては宅建の取得がキャリアアップの条件となっているケースもあるでしょう。
宅建を取得することでキャリアアップできれば、より高い年収を目指すことも可能です。

 

法律系資格の登竜門と言われている

宅建は、他の資格の試験範囲とかぶる内容も多いため、宅建の勉強をしていることで他の資格取得が目指しやすくなります。
FPやマンション管理士などは、目指しやすい代表的な資格です。
それらの資格も取得することで、キャリアアップも目指せるでしょう。

また、宅建は行政書士や司法書士など法律系国家資格の登竜門ともいわれています。
宅建取得後に、さらに難易度の高い国家資格を目指す人も少なくありません。
不動産業界だけでなく、最終的にどのような仕事がしたいかも視野に入れて宅建や他の資格取得を目指すとよいでしょう。

 

不動産転職で宅建を取得するデメリット

宅建はメリットがあり価値のある資格です。
しかし、どんな資格であってもデメリットは存在します。
宅建の取得にも勉強時間の確保などデメリットもあるので注意が必要です。
デメリットとしては、下記の3つが考えられます。 資格取得に時間がかかる 取得後に登録や更新が必要 責任が大きくなる  

資格取得に時間がかかる

宅建は多くの人が受験し数多くの合格者を出しているからと言って、簡単に取得できる資格というわけではありません。
合格するには、しっかりと勉強が必要です。
法律の知識のない人が独学で合格を目指す場合500時間、ある程度知識のある人でも300~400時間は勉強が必要と言われています。
仮に、300時間勉強するにしても、毎日5時間しても60日は掛かります。
仕事をしながら1日2時間ほどの勉強なら150日も時間が必要です。
さらに、時間をかけたからと言って必ず合格できるわけではありません。
宅建試験は毎年1回しか開催されないため、今年落ちれば次のチャンスは1年後となります。
長期的に取り組む必要があるので、モチベーションの維持なども重要になってきます。

 

 取得後に登録や更新が必要

宅建は試験に合格してからと言って、すぐに仕事につかえるわけではありません。
合格後は都道府県に宅建士として登録し宅地建物取引証の交付を受ける必要があります。
また、宅地建物取引士証は5年毎に更新が必要です。


登録・更新時には、次のような費用がかかります。 登録手数料:37,000円 宅地建物取引士証交付手数料:4,500円 更新料:16,500円 なお、宅建士として実務経験2年未満の場合、登録には別途講習の受講も必要です。
このように、登録・更新に費用や手間がかかる点には注意しましょう。

ただし、宅建の資格を一度取得すれば、資格自体は生涯有効です。
更新せずに有効期限が終わった場合でも、再交付の申請をすれば宅建士の仕事をすることが可能です。
宅建士の資格が必要な仕事に就く際に登録・更新すればよいので、資格が無駄になるわけではありません。

 

 責任が大きくなる

宅建士には宅建士にしかできない業務がある反面、宅建士への責任も大きくなります。
万が一、重要事項説明でのミスがあれば損害賠償責任を問われる恐れもあるでしょう。
とはいえ、基本的に不動産会社ではミスが無いように厳重なチェック体制や万が一の保障を整えています。
しかし、自分でも責任が大きい仕事であることは理解し、常に細心の注意を払う必要はあります。

 

不動産転職のために宅建を取るべき?

結論をいえば、取得するのがおすすめです。

しかし、取得が必ず転職に有利になるわけではない点は理解しておきましょう。
特に、「転職のためにとりあえず取得しよう」と考えているなら取得はおすすめできません。

 

不動産転職に宅建は必須ではないケースが多い

不動産業界に欠かせない資格とはいえ、採用の必須資格でないケースがほとんどです。
宅建の資格がなくても応募できる求人は多くあります。
宅建がないと転職できないと思っている人は、まず求人の具体的な採用基準をチェックしてみるとよいでしょう。

 

宅建を取得していても面接に落ちることはある

宅建を取得しているからと言って採用されるわけではありません。
同じ結果で採用を悩んでいるときに宅建の有無が差になることはあるかもしれません。
しかし、宅建を取得しているからという理由だけで採用されることはありません。
反対に、宅建を取得した理由を面接時に問われて「転職の為」と答えることでマイナスイメージを与える恐れがあるでしょう。
大事なのは資格の取得ではなく、取得や不動産業界を目指す理由や熱意です。

 

転職後に勉強して資格取得するのがおすすめ

宅建を取得してから転職しようとすると、独学ではかなりの時間がかかります。
既に転職を決意しているのであれば、転職後の資格取得がおすすめです。

不動産会社の中には、社内での資格取得サポートが整っている会社も少なくありません。

今は取得していなくても、今後取得に向けて勉強中というだけでも面接時の印象アップにはつながるでしょう。

 

宅建資格が役に立たないことに関するよくある質問

最後に、宅建資格が役に立たないことに関するよくある質問を見ていきましょう。
 

宅建資格を取得して人生が変わるケースもある?

状況によりますが、宅建資格を取得して人生が変わる方もいらっしゃるでしょう。
宅建士資格はメジャーな資格ですが、法律系資格の登竜門とされており、そう簡単に資格取得できるわけではありません。

要領の良い方でも3ヶ月~半年程度、全くの未経験だと1~2年間は勉強しなければならないこともあるでしょう。
特に、これまで真面目に勉強してこなかったという方にとって、長期間勉強に取り組んで、合格という成功体験を掴むことで人生が好転するという方は少なくないようです。

上記のような、精神的なものだけでなく、資格を取得することで昇給や昇格を果たすケースもあるでしょう。

 

宅建はオワコン?やめとけと言われる理由とは

宅建士はオワコン、やめとけと言われることもあるようです。

この理由としては、特に不動産業において宅建資格を取得しても業績が上がるわけではなく、資格を取得したところで営業成績が振るわなければ自主退職を考えなければならないケースがあることなどが理由として挙げられるでしょう。

また、オワコンと言われる理由としては、宅建業者が減っているのに対して、宅建士の資格取得者が増えており、需要と供給が合っていないことが理由として考えられます。

不動産業界への転職を考えている人におすすめなのは、不動産業界に転職した後、一定の成績を挙げられるようになってから、宅建士の資格を取得することです。

宅建業者は従業員数に対して一定数の宅建士を配置する必要がありますが、いってしまえば誰を配置してもよいのです。
営業成績を挙げられるのに加えて、宅建士を取得しているのであれば、より重宝される存在となりやすいでしょう。

 

宅建を活かせる仕事で不動産以外の業界はある?

宅建士は宅建業者における独占業務を行える業種で、設置義務もあるため、特に不動産業で重宝される資格です。

一方、不動産業以外にも不動産と取り扱う業界として、金融業や保険業などがあり、そうした業界でも宅建資格を取得していると活かせる可能性があるでしょう。

宅建を活かせる不動産業以外の業界については、以下記事で解説しています。
>>宅建資格を活かせる仕事で不動産以外の業界とは?宅建士の強みやメリットと併せて解説

 

まとめ

宅建は、取得したからといって転職が有利に運ぶほど便利な資格ではないため役に立たないと言われてしまうことがあります。
しかし、宅建を取得していれば、年収アップが期待できるなどメリットがある、人生の大きな財産にもなります。
宅建取得には時間がかかるため、不動産業界への転職を検討しているなら、まずは宅建の取得よりも転職を優先させることがおすすめです。
不動産業界には宅建が必須ではない求人も多くあります。
転職後に宅建を目指してみるのも一つの手と言えるでしょう。

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