今回は不動産業で将来的に独立開業を考えている人に向けた記事をお届けします。
会社員として勤務していると、組織の一員として動かなければならないため、仕事の方針を自分の判断ですべて決めることはできません。
インセンティブ制度を採用している会社もありますが、年収の大部分は会社によって決められます。
一方、独立開業すれば自分で自由に仕事ができ、事業が成功すれば大きな収入を得ることが可能です。
そのため、将来、独立を目指して不動産業界に入る人も多くいます。
しかし、どうすれば不動産業で独立開業できるのか、具体的に説明できる人は少ないのではないでしょうか?
不動産業は比較的、独立開業しやすい業界ですが、成功するのは簡単ではありません。
独立するための方法をしっかりと把握し、自分なりに計画を立て、行動することが重要です。
そこで本記事では、不動産業で将来、独立するために必要な手続きや資金について解説します。
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不動産業で独立するには免許が必要
不動産業で独立するために宅建業の免許が必要です。
初めに免許の取得方法などについて解説します。
・宅地建物取引士の資格を取得する
宅建業の免許を取得するには、専任の宅建士(宅地建物取引士)を確保する必要があります。
これは独立開業する本人でなくても、同じ会社の社員であれば問題ありません。
宅建士の資格を取得するには、宅建試験に合格し、資格登録をしなければなりません。
宅建士の試験は毎年1回10月に実施されます。
受験するための条件はなく、年齢・性別・学歴・国籍を問わず誰でも受けることができ、毎年20万人前後の人が受験を申し込んでいる人気の高い国家資格です。
合格率は毎年15%前後で推移しており、簡単に合格できる試験ではありませんが、宅建士として開業を目指すならば、ぜひ代表者自身が取得しておきたい資格です。
なお、試験合格しただけでは、宅地建物取引士を名乗ることはできません。
試験に合格した都道府県で資格登録を行い、宅地建物取引士証の交付を受けることで、初めて宅建士としての業務が行えるようになります。
この際、2年間の実務経験がある人は、資格登録後に取引証の交付を受けられます。
しかし実務経験がない人は、国土交通大臣の登録を受けた機関の実務講習を受講しなければ、資格登録ができない仕組みになっています。
また、試験合格後1年以内に交付申請手続きを行っているかどうかで、手続きが異なる点にも注意が必要です。
もし試験合格後、1年を超過してしまうと、資格登録を終えた後に、都道府県知事の指定を受けた機関が実施する法定講習を受講しなければ、取引士証の交付は受けられません。
したがって、取引士証を取得したい場合は、試験合格後、速やかに資格登録手続きに移ることをおすすめします。
・宅建業の免許を取得する
専任の宅建士を確保する目処がついたら、次のステップとして宅建業の免許を取得する必要があります。
宅建業法では免許をなしに不動産取引を行うことが禁止されていますので、たとえ独立資金があったとしても、免許なしに独立開業は不可能です。
さらに免許を取得するためには「事務所がすでにあること」が条件となっているので、事務所の開設も必要になります。
個人宅を事務所とすることもできますので、初めのうちは新しく事務所を構えず、自宅兼事務所として始めるのも良いでしょう。
免許取得後に必要な手続きと資金
免許が取得できたら、独立開業のための各種手続きを行っていきます。
手続きには多くの資金が必要になるので、事前に計算しておくことをおすすめします。
会社の規模などにより変わりますが、平均して400万円ほどの資金が必要です。
では、具体的にどんな手続きが必要で、それぞれどの程度の資金を要するのか、見ていきましょう。
・法人設立費
不動産会社は個人事業として開業することも可能ですが、法人化する場合がほとんどです。
法人化したほうが、個人事業で開業するよりメリットが大きいためです。
具体的には以下のメリットが得られます。
・社会的信用が得られる
・節税対策に繋がる
・個人にかかるリスクが減らせる
しかし、法人設立するためには25~30万円の費用が掛かります。
大まかな内訳は以下の通りです。
・登録免除税
・定款の認証手数料
・収入印紙代
このうち、収入印紙代は電子定款を用いることで削減が可能です。
ただし、電子定款は作成に専用機器が必要になるため、基本的に外注するものと覚えておきましょう。
独立前にまずは不動産業界での転職を希望する
・宅建協会入会金
不動産会社を開業する場合、ほとんどの会社が宅建協会(全国宅地建物取引業協会)へ入会しています。
費用はかかりますが、宅建協会へ入会することによるメリットがとても大きいためです。
具体的には以下のようなメリットがあります。
・弁済業務保証金分担金を納付することで営業保証金の供託が不要となる
・日常的なサポートが受けられる
・法務・事務・書式フォーマットが無料ダウンロードできる
・様々な不動産セミナーを受講できる
特に弁済業務保証金分担金の納付により、営業保証金の供託が不要になる点は非常に大きなメリットです。
営業保証金の供託に必要な金額は、主たる事務所1,000万円、従たる事務所1ヵ所につき500万円とされています。
開業時に用意するには大きすぎる金額で、現実的ではありません。
一方、弁済業務保証金分担金は、主たる事業所で60万円、支店1ヵ所ごとに30万円と決められています。
営業保証金と比較するとかなり安い金額で、このくらいなら何とか用意できると思う人も多いでしょう。
こうした金銭的なメリットも考慮して、多くの事業所が宅建協会に加入していることが予測されます。
なお、宅建協会の入会にかかる費用は、都道府県ごとで異なりますが、平均すると130万円~180万円程度です。
また、宅建協会には「全国宅地建物取引業協会」と「全日本不動産協会」の2つがあります。全日本不動産協会のほうが、入会にかかる費用が20万円ほど安いので、少しでも費用を抑えたい方はこちらを選ぶと良いでしょう。
・宅建都道府県庁申請料
前述した宅建業の免許申請の際、収入印紙代が発生します。
「国土交通大臣免許」「都道府県知事免許」のどちらに該当するかによって印紙代は異なります。
それぞれの金額は下記の通りです。
・国土交通大臣免許⇒90,000円
・都道府県知事免許⇒33,000円
国土交通大臣免許は2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合、都道府県知事免許は1つの都道府県のみに事務所を設置する場合です。
初めて独立開業する場合は、「都道府県知事免許」のケースがほとんどですが、「国土交通大臣免許」との違いも覚えておきましょう。
まとめ
以上、不動産業で独立開業するために必要な手続きや資金を解説いたしました。
最後に今回の内容をおさらいします。
・不動産業で独立開業するためには、宅建業の免許が必要。
・宅建業の免許の取得には宅建士の設置が必須である。
・免許の申請には収入印紙代が発生する。
・法人設立には25~30万円の資金を要する。
・宅建協会への入会は必須ではないが、はほとんどの会社が入会する。
・宅建協会へ入会すれば、営業保証金の供託が不要となる。
不動産業は他の業種と比較して、独立開業がしやすいと考えられています。
宅建協会へ入会すれば、必要資金も大幅に少なくなりますので、大きなメリットがあります。
しかし、独立開業がスムーズにできても、事業が成功するかどうかは別の問題です。
まずは不動産会社で実績と人脈を作ったうえで、次のステップとして独立を目指すと良いでしょう。
なお、不動産業界への転職でお悩みの方は、業界特化型の転職エージェントの利用をおすすめしますので、この機会にぜひ検討してみてください。
独立前にまずは不動産業界での転職を希望する